Tonality 単なるモノクロ変換ソフトではない。

画像編集ソフトTonality

Macphun Software(US)のTonality(トナリティー)と言うソフトの紹介と使いかたを少々レポートします。Macphun Software(現在はSkylum)はMac用の写真編集ソフトを色々出しているのでご存知の方もあるでしょう。Tonalityはモノクロ変換だけでなくカラーデータにおいても使い込んでいけるソフトです。仕事や個人的にもよく使うソフトでコントロールしやすく、かなり追い込んだ作業も出来るので自分の写真が「今一つ」と思われている方は使ってみては如何でしょうか。
Adobe LightroomやCapture OneそしてPhotoshopなどでもモノクロ変換やエフェクト処理ができますが、微妙な追い込みがやりにくかったり手間と時間がかかったりします。NIKのSilver Efex Proと比べても扱えるファイルタイプが多くシュミレーションが早く秀逸なので直感的に作業が進められます。

Skylum Tonality

概要説明
上の写真から概要を説明します。一番上はメニューバーでファイル操作や拡大、処理前後の比較ボタンが並んでいます。メイン画面には読み込まれた写真が表示され右横にツールバー、ツールバーの一番下にプリセットがあり各種のプリセットがセレクトできます。上の写真はプリセットでBasicを選んでいるのでそのシュミレーション結果のサムネイルが横並びに表示されクリックすれば即座にメイン画像に適応されます。必要ない場合はプリセットボタンで閉じればウィンドを大きく使えます。プリセットは数種あり好みでいろいろ選べますが僕はあまり使わずツールバーから直接操作することが多いです。プリセットテーマと絵柄を見ればなんとなく想像できるのも良いです。使い始めの初期にはプリセットで好みのものを選び、その状態でツールバーの内容を見るとどんな感じで設定されているか解りますから操作の習得には良い方法と思います。
ツールバーには上からレイヤー、色温度、トーン、透明度&構造、カラーフィルターなど13項目が並んでいてそれぞれ閉じたり開いたり出来ます。開くと項目ごとにスライダーボタンがあるので画像を見ながら直感的な操作が可能です。機能的にはLightroomやPhotoshopとほぼ同様の動きをするのでで迷うことはあまりないと思います。カラーフィルター、レイヤー、透明度&構造、グローについてはTonality独特の部分があるので後述します。
カラーフィルター
「単なるモノクロ変換ソフトではない。」と書きましたがカラー画像の編集操作も可能です。左の図はツールのカラーフィルターを展開した状態ですが、その中の彩度ボタンを選ぶと全て「0」になっていますがこれは元の画像の彩度を全て0にしてモノクロ表示にしていると言う事です。これを全て100%にすれば元のカラー画像を各ツールでコントロールが可能になります。(もちろん好みに応じて輝度と彩度を調整しても良いでしょう)このように輝度と彩度を調整する事でカラーからモノクロ、微妙なカラーエフェクト処理が可能になり、僕はカラー画像であっても最終的処理にTonalityを使う事が多いのはこの辺の事情によります。カラーフィルターツールの一番上に並ぶ6個の四角い色の付いたボタンは輝度調整のプリセットです。
レイヤー
Tonalityの特徴はこのレイヤーツールにもあります。Photoshopなどと同じようにレイヤーツールの+ボタンから複数枚のレイヤー構造が可能でそれぞれのレイヤーに個別調整結果を保持出来ます。また各レイヤーは透明度が0〜100%まで設定可能です。またベースレイヤーには適応できませんが新たに作ったレイヤーに対しては上記で述べたように彩度調整する事でモノクロでなくカラー化する事も可能で、更に「ソフトライト」「オーバレイ」「乗算」等のレイヤースタイルが適応できます。このレイヤーは一番上のメニューバーにあるブラシマスクツールを使うことで微妙な部分調整が可能となり、基本はモノクロである部分はカラー、またある部分はトーニング処理などと自在にイメージコントロールできます。Photoshopのレイヤーマスクと同様の感じです。
ブラシマスクツールを選択すると上のようなマスク設定が開きここからマスクの表示や反転、ブラシサイズなどコントロールできます。マスクを消したり修正する時にはoptionキーでマイナスのブラシになります。
透明度&構造
透明度&構造の透明度スライダーはLightroomやPhotoshopの「カスミの除去」に似た機能で、構造スライダーはLightroomの「明瞭度」Capture Oneでは「クラリティー」とほぼ同様の働きをします。微細な画像構造スライダーはまさに適応範囲を細かく設定した構造スライダーです。(適応範囲の広いシャープマスクのようでもあります)他のツールにもありますが、メインのスライダーボタンと対になってアダプティブ、スマート、プロテクションなどのスライダーボタンがあり、かなりの調整幅があります。(アルゴリズムはよくわかりませんが効果は独特です)
グロー
グロースライダーボタンは独特です。まさに輝き調整ボタンですが、画像やその構成要素で効果的であったりそれ程でもなかったりします。画像全体にかけるよりレイヤーとマスクを併用して部分的に使うと効果的であったりします。メインの「量」スライダーボタンに「スムーズ」と「閾値」調整ボタンがあり、これもまた相当微妙な追い込みが可能です。

まとめ
モノクロ写真はフィルム時代には単純にモノクロネガフィルムで撮影すればそれでOKでした。後は暗室作業があるだけで。今や大半がデジタルカメラで撮像素子にはカラーフィルターが組み込まれ、出てくるデータはRGBのカラーデータです。最近の撮像素子は高画素で画像演算ソフトも進化してビット深度(ダイナミックレンジ)も深く、特にRAWデータとしてカラー撮影した写真は幅広い階調を持っています。それをそのまま彩度だけ0としてモノクロ化するとなんとも眠い締りのない写真になります。(モノクロネガで撮影、プリントしたものは階調の幅はずっと狭いものです)

デジタルカラー写真から気持ち良い白黒写真を作り出すのは上記の理由などで相当の調整が必要になり、さらに個人の感性や嗜好も様々ですから、かなりクリティカルな操作も必要となります。種々現像ソフトやPhotoshopなどがモノクロ変換のプリセットを用意している理由はその辺にあると思いますが、モノクロ変換に的を絞った専用ソフトを使った方がより直感的な操作ができ効率的だと思います。モノクロ変換やフィルムシュミレーションに特化したソフトはNIKのSilver Efex Pro、DxO FilmPack、TonalityなどPhotoshopのプラグインがあり機能もそれぞれですが、高機能でハンドリングの良いTonalityをメインに使っています。
TonalityはMac App Storeから出ている(¥1,800 *2025年現在はApp Storeには無いようです)もので十分ですがプラグインやPhotoshopから直接psdファイルを開くなど、より使い込みたい場合はmacphun.com.LLCからフルバージョン版(約¥6,000)を入手した方が良いかもしれません。

現在macphun.comはskylum.comに名称変更しています。https://skylum.com/tonalityでアクセスできます。

α7ⅡとHELIAR 40mm F2.8

SONY α7Ⅱ & HELIAR 40mm F2.8  撮影 自作ビューカメラ+NikonD800E+Grandagon-N90mm f22

SONY α7ⅡでCOSINAのHELIAR 40mm F2.8を使っています。この一風変わったレンズをレポートします。
このレンズを手に入れたきっかけは当ブログでも紹介していますが、HELIAR 15mmを使うために購入したVM-E Close Focus Adapterが手元にあったので、ヘリコイドもなくレンズ構成に絞りだけ付け沈胴式を採用し(非常にコンパクトに収まります)単体では価格もこなれているので購入しました。上の写真は撮影状態に沈胴式を引き出した状態ですが、45度くらい回転させロックを外して押し込み収納するとレンズ先端はカメラグリップより若干でっぱる程度でパンケーキレンズ同様です。

撮影 自作ビューカメラ+α7Ⅱ+Planar2.8/80 f11

上の写真はレンズ単体を沈胴させた状態の前面と裏面です。価格から想像できないくらいの金属製の素晴らしい造りこみでシャンペンゴールドのニッケルメッキは独特の雰囲気でさすがにCOSINAと感心します。プレートの左右に立ち上がるピンはアダプターに脱着するときの取っ手になります。
以前からある沈胴式のレンズではライカのエルマー50mmなどありますが、このHELIARは40mmと言うちょっと中途半端な焦点距離のように思いますが、使ってみて解ることですが何気なく自然にみている視野に近い感じで、50mmだと少し狙い込んだ画角になり、35mmだと意識的に少し広角で40mmはごく素直な感じがします。(この辺は個人差があるとも思いますが)外観はかなり趣味的な感じのするレンズですが、描画は極めてまっとうでCOSINA独特の色ノリの良いしっかりした現代的な描画でシャープな写りをしますが決して硬くならないところが魅力です。

駒沢公園駅 f5.6 ISO200 1/10 手持ち撮影

上の写真は地下鉄駅の工事中の壁ですが、湾曲収差などほとんどなく骨太のしっかりした描画であることがお分かり頂けると思います。(画像処理で少しコントラストなど上げていますが)この写真はf5.6あたりで撮っていますが、僕は理由がない限り絞り開放でボケを使うことはしません。このレンズもf8を中心にして使っています。唯一気になる部分はギリギリ四隅の描画が少し甘いことです。(このレンズ、沈胴式を採用したコンパクトサイズでは無理な要求かもしれませんが)フィルムカメラで使った場合はほとんど気になることはないと思いますが。

上の写真は湾曲収差と周辺光量のテストシュートです。絞りf8でJPEG撮影、レンズ補正なしの素のままですが湾曲もほとんどなく(若干糸巻き傾向ですが)周辺光量落ちもほんのわずかで、日常十分に使える性能を持っています。

SONY α7でマニュアル撮影に慣れていて、いつもバッグなどに入れて持ち歩きたい人には40mmと言う焦点距離、沈胴式のコンパクトさなど最適なレンズと思います。ソニー純正レンズではないのでレンズ情報が記録されないのでソニーカメラapp「レンズ補正」を併用して使っています。

 

α7Ⅱ と SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Aspherical Ⅲ


他の35mm一眼レフに比べSony α7シリーズはフルサイズでありながらミラーレス構造で非常にコンパクトで軽く持ち運びも楽です。(手の大きい人にはちょっと小さすぎるくらいです)
大きく重くなった一眼レフに嫌気がさしてα7Ⅱを使い始めた訳ですが、肝心のレンズが大きく重いのでは困ります。特に最近のレンズはズームで明るい大口径、AFで手ぶれ補正機能内蔵、構成レンズ枚数も諸性能を高める為どんどん増える傾向にあり重量も増え大きくなっています。
広角レンズをよく使うのでSUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Aspherical Ⅲを選びました。重量は247gで手の中に入る大きさです。(小さいのでずっしりした感じではありますが)コシナから最近Eマウント用の10mm、12mm、15mmが出ていますが、クロスフォーカスアダプターを介して使うVMマウント用。クロスフォーカスアダプターがあれば他のVMマウントレンズやZEISS ZMレンズなど魅力のあるレンズがコシナにあるためです。
下の写真はHELIAR 15mmとVM-E Close Focus Adapterでこのアダプターもレンズ同様金属製で非常に作りが良く、ヘリコイドも内蔵しカメラ側レンズ側ともカッチリ装着できガタなど皆無です。ヘリコイドは4mmの繰出量があり、装着したレンズの最短撮影距離がさらに伸び、クローズアップレンズやエクステンションチューブが必要ないくらいです。

SUPER WIDE HELIAR 15mm & VM-E Close Focus Adapter

本来このVMマウントレンズはライカのMマウントと互換性があり(フォクトレンダーブランドがVM、ツアイスブランドがZMと表記しているようです)ミラーボックスを持たないレンジファインダーカメラ用なのでフランジバックを無理やり伸ばす必要がなく設計や構造に無理がなく比較的にコンパクトで軽いのが良いです。
ただしフランジバックが短いとデジタルカメラの撮像素子に対しては問題があり、特に広角系では後ろ玉(レンズ後端)がボディの中にもぐりこむように撮像面に接近します。それにより周辺光量落ちと周辺色かぶりが顕著になり、最近Eマウント用の10mm、12mm、15mmはその辺対策済みと思いますがこのSUPER WIDE-HELIAR 15mmもⅡ型からⅢ型への変更で対策されています。(裏面照射型Cモスの撮像素子を持つα7RⅡはこの問題もかなりクリアされている様です)

前置きはこのくらいで撮影した写真をご覧ください。

土曜日の表参道、ビル内にて
新国立美術館の午後
地下鉄表参道駅

上の三点の写真の様にカメラを水平に構えると確かにワイドレンズであはりますが、超ワイドレンズの嫌味がなく自然に見えるのがこの15mmの良いところです。
名前のSUPER WIDEとはうまい使い方と思います。10mm F5.6はHYPER WIDE、12mm F5.6はULTRA WIDE!!
目の前に広がる広い景色を単純に撮り込みたい時や、引きのない状況で画角を稼ぎたい時がこのレンズの出番です。やや油絵的な豊かな色ノリもこのHELIARシリーズの特徴のようです。コシナの説明では開放値がF4.5でありフォーカスを2〜3メートルに合わせればほとんどパンフォーカス(手前数メートルから無限遠までOK)で行けるように書いてあるが、使い込むと確実にピント面がありしっかり狙って撮る時はシビヤなピント合わせが必要です。その点もα7Ⅱはボタンひとつで簡単にフォーカス拡大ができるので便利。

汐留ビル群の夕方

汐留のビル群の撮影はカメラを空に向けて煽っています。このように水平でなく少し煽るだけで15mmの超広角独特のパースペクティブが表現できるレンズでもあります。
またこの写真から分かるように画面の四隅に空とか微妙なグラデーションの中間色があると、まだ若干色かぶりがあります。(これはRAWで撮影して現像段階でレンズ補正を行い、さらに四隅の色かぶりも補正していますが)現像処理した画像をPhotoshopなどで色々処理をかけると四隅の色かぶりがまた少し現れてくるところを見ると、元データ四隅の周辺落ちと色かぶりがα7Ⅱではまだ完璧ではないようです。
ただ周辺落ちや多少の色かぶりは気にしない場合やあったほうが雰囲気が良い場合もあり、この辺は好みの問題でしょうか。

三国山のブナ

上の写真は山中湖の横、三国山ブナの大木でこの辺りから丹沢山系や箱根周辺は関東圏でブナ林が見られます。(人間の手が入っていない山にはまだブナが生息しているということかもしれません)この写真ではHELIAR 15mmの画面周辺の描写性能を示します。このレンズは歪みやゆがみがほとんどなく直線はまっすぐに写り建物などの撮影もこなせます。この写真もカメラは水平に構えています。このブナの木はかなりの斜面にあり斜面傾斜がわかると思います。下の写真は画面上側の右側端の部分100%切り出しです。絞りはf8で撮影、広角のため画像が斜めに引っ張られていますがかなりしっかりと解像していてピントもなくボヤボヤした感じはありません。この程度であれば十分許せる範囲と私は思います。

100%部分切り出し

下の写真は、同じく三国山のブナの大木「天狗ブナ」です。10月の初め紅葉が始まったばかりの頃撮影しました。森の中であまり引きのない場所でもこのレンズは見えている全容を捉えることが可能です。超広角の独特の癖もあまり感じさせない(湾曲歪みが殆どないので)この15mmは良く使うレンズの一本です。

三国山ブナの大木、通称「天狗ブナ」

Sony α7Ⅱと引き伸ばしレンズ・FUJINON-EP

Sony α7シリーズが発売されてから引き伸ばしレンズを撮影レンズとして使う話題が出てくるようになりました。そのせいでもう使われる事なくしまい込まれた古い引き伸ばしレンズがネットオークションなどに出て来て少しずつ値上がりしたりしています。
Sony α7シリーズは35mmフルサイズでミラーレス構造の為フランジバックが18mmしかないので純正レンズ以外でも使用可能な(アダプターなど使い)レンズが多くあります。Sonyもその事はよく分かっているようで他社製のレンズや古いレンズもうまく使い回しできるよう配慮されています。
そんな訳で話題に触発され、もう使わなくなった暗室の棚に眠る数本の引き伸ばしレンズから35mmで一般的に標準レンズと言われる50mm、FUJINON-EP 1:3.5/50を常用レンズの一本に加えることにしました。
まず、手始めはFUJINON-EP 1:3.5/50のオーバーホールです。ずいぶん長い間使わなかったのでカビや埃、レンズ面の曇りなど取り除き、幸いにもこのレンズは貼り合わせのバルサム切れがなかったのでバルサム剥がしは必要なく再組み立てしました。次はこのレンズのフランジバック焦点距離51.6mmを確認、ヘリコイドユニットの厚みや繰り出し量などのめどをつけました。


用意したパーツの紹介。ヘリコイドユニットM42はmukカメラサービスの商品で厚みは15.4mm〜27.5mm(繰り出し量12mm)手前と後ろに42mmのメスオスのネジが切ってあるもので定価4,800円、同様のもがamazonでは¥3,400位であるようです。ちなみにM42と言うのはレンズマウントのネジ規格でプラクチカが採用し、昔のペンタックスのスクリューマウントも同じ径42mmピッチ1mmのネジです。

引き伸ばしレンズのマウントネジはライカマウントが多く、これは39mmネジなので一回り大きな42mmに付ける為のアダプターネジが必要でamazonから入手。(一個¥399でした)そしてヘリコイドユニットをSony α7に取り付けるM42 Eマウトアダプターが必要なのでこれもamazonから¥540で超薄型というものを入手。M42マイクロチューブセットは7mm、14mm、28mmの三種類がセットでクローズアップ(接写)する時に使用していますが、70〜90mmのレンズも組み合わせることで使えます。(90mmクラスのレンズをマクロレンズとして使う場合はより延び代の大きいヘリコイドを選んだ方が良いと思いますが)FUJINON-EP 1:3.5/50はマウント側に奥行き7mmの調節リングがあり、これで光路の長さを変更できるようになっています。今回これは付けたままでちょうど良くピントは無限遠からレンズ先端30センチまでカバー出来ています。ちなみにEL-Nikkor 1:2.8/50はチューブセットの7mmを追加して無限遠からレンズ先端約50センチまで可能でした。引き伸ばしレンズは各社それぞれフランジバック焦点距離の違いがあるので確認が必要です。下の写真はカメラマウントできる状態に組んでヘリコイドを最大に伸ばしたところですが、フォーカスリングがカメラボディ側ギリギリにくるので慣れないと使いにくいですがコンパクトに収まり軽いのところが良いです。

FJINON-EP50mm 4Photos

最近のコンピューター設計や非球面レンズを使用した複雑な構成をとらない二昔ほど前の4群6枚オルソメター型レンズですが、開放(f3.5と決して明るいレンズと言えないが)から中心部は極めてシャープ、f8位まで絞れば周辺部まで十分な解像度を持ち歪みや湾曲もほとんどなく、改めて引き伸ばしレンズの高性能を実感しました。古いとは言えカラープリントの時代のもの、コーテイング処理も行われアクロマチックレンジ(色収差)は380〜700nmで十分。これが暗室での引き伸ばし作業にチューニングしてある所為か撮影に使うとなんとも柔らかくロマンチックな色再現でとても気に入りました。レンズ鏡胴はしっかりした金属製で絞り羽根は10枚構成の円形絞り、またシンプルなレンズ構成ゆえフォーカスアウトした部分のボケに癖がなく極めて自然、これも最近のレンズではなかなか得られないところでしょうか。

FUJINON-EP 50mm スペック

50mmの引き伸ばしレンズは主に35mmネガから8’×10’や四つ切りの印画紙に像を焼き付ける用途なので製版レンズなどと同等の性能が必要なのは理解しつつも撮影レンズとして使うことは最近まで考えが及びませんでした。マクロプラナー50mm F2も所持していますが、チョット味が違うのでこのFUJINONを仕事にも使っています。

FUJINON EP 50mm f8
Zeiss Makro-Planar 2/50 f8

上の写真はFUJINON-EP 1:3.5/50とマクロプラナー50mm F2で両方とも絞りf8で湾曲収差と周辺光量落ちテスト撮影、レンズ補正なしの素のままのJPEGですがFUJINONの素性の良さがよく判ります。(マクロプラナー50mmはZF Nikon用なのでマウントアダプターを介してレンズ群が撮像素子と距離があるので条件的には有利かもしれませんが)

蓼科大滝付近の流れ蓼科大滝脇の原生林白駒池付近庭に咲いたホトトギス

α7シリーズをお持ちでマニュアル撮影に慣れている方は引き伸ばし用のレンズを試してみる価値あります。EL-Nikkorは人気で値上がり傾向がありますが他にもFUJIやLUCKYでジャンク品で安く出回っている物も色々とあります。(自身でオーバーホールする自信のない方はカビやバルサム切れのない物を選んでください)撮影レンズとして使うために一つ注意があります。元来暗室で画像投影のためのレンズなので逆光及びハレーションには弱いので画角ギリギリまでのフードを用意して本来の性能を引き出してください。(私はコーヒーの空き缶を適当な長さに切り黒のマットテープを巻いて使っています。)また、他の写真や大きめの写真は自身のサイトにもアップしています。興味のある方はご覧ください。

最近このレンズで撮影した紫紺野牡丹のつぼみの写真、掲載します。M42マイクロチューブセットを使いかなりのクローズアップですが、なかなか切れの良い描写をしています。カメラはa7R3で深いピント領域が欲しいのでピント面をずらしながら5カット撮影してPhotoshopで合成したものです。

紫紺野牡丹の写真
紫紺野牡丹 2018.11

Sony α7 Hand made View camera

Sony α7Ⅱの使用をベースにビューカメラを自作しました。特別な工作機械が手元にあるわけでもなく、精度は実用に耐える物にしたかった為、手元にある既存のパーツを流用することから始めました。友人から譲り受けたNikonの接写ベローズPB-6の不要部分をカットしてカメラのベースとし、フロントはリンフォフマスターテヒニカ(最近は殆ど使うことないので)のフロント部分を流用、リアのスタンダードとカメラマウントはアルミ材の自作。
「蛇腹」これが難問。短いフランジバックの中で自在に動く柔らかさと完璧な遮光性が必要で2mm厚のネオプレン素材の袋蛇腹をハンドメイド。出来るだけ多くの手持ちレンズに対応するように大小二個製作、マグネット脱着方式です。

ビューカメラ製作の意図
カメラがデジタル化される以前、仕事で使うカメラは主に4×5インチ(一般的に言うシノゴ)や8×10インチ(エイトバイテン)等が多く、画質よりも機動力優先の場合に6×6(ハッセル)や35mmカメラを使っていました。
初期のデジタル一眼の画素数や画質が仕事に使うには満足出来るものではなかったが、数世代過ぎた現在のものは飛躍的に画素数も増えダイナミックレンジも拡大し、もはや昔の大判カメラの領域を超える描画性能を持っていると思いますしさらに高性能化が進むでしょう。
しかし、デジタル一眼カメラは、フィルム時代の基本構造を引き継ぎつつ発展したので、そのシステム構成の中で普通に使用するにはなんの問題もないけれど、レンズやボディの汎用性(色々な使い回し)がほとんど無く、高性能化の中でレンズもボディも大きく重い物へ変化してきました。
Sony α7シリーズはミラーレスのためレンズマウント面から撮像素子までのフランジバックが18mmしかなく、Eマウントレンズのみでなく種々レンズが使用可能と汎用性が高く、その小型で薄いボディはデジタルバックタイプに近い構造で、これまた汎用性の高いボディだと思います。
Sony Eマウント用のシフト、ティルトマウントアダプターもありますが、種々のレンズに対して互換性が無く、ボディ側固定でレンズを動かすタイプが多く、これではビューカメラの機能の半分しかないことになる。
Sony α7Ⅱを入手したので、(現在はα7rⅣ使用)その小型で薄いボディを利用して、接写はもとより、スィング、ティルト、シフト等可能なスタジオ内使用だけでなく屋外にも持ち出せ、4×5インチ用や6×6(ハッセル)用の手持ちのレンズ使える小型ビューカメラを自作しました。

動作説明カット
下の7枚のスライドショーはMamiya-Sekor C 35mm N 645レンズ装着、無限遠にフォーカスした状態で各動きを示しています。動かせる範囲はレンズのイメージサークル内に限定されますが・・・(なおこのスライドショーは改良前のビューカメラで撮影したものです)

主要構成パーツの紹介

画面左からリンフォフレンズボード2枚で上がフラットボードにハッセルレンズマウントを付けたもの、下が凹型ボードにマミヤ645レンズマウントを付けたもの、(マミヤ645レンズはハッセルレンズに比べるとフランジバックが少し短いので凹型ボードで対応)上段左がリンフォフマスターテヒニカのフロントユニットでこのコンパクトな中にスィング・ ティルト・シフト・ライズなど機能が詰め込まれています。その右側がNikonの接写ベローズPB-6を流用したカメラベースでテヒニカのフロントを装着する台とカメラマウントを装着する台で左右にシフト出来る構造のアルミ製です。下段中央がネオプレン素材で作った袋蛇腹で円形に8個並ぶネオジムマグネットでカメラマウントに強力に固定できます。画面右下の二個はカメラマウントで縦位置用と横位置用、足の部分が固定用で長めに作り上下可動域は20mm以上あります。(この部分の詳細は改良編をご覧下さい)

画面左がネオプレン袋蛇腹をレンズボード側から見た状態で、空き缶を利用した薄い鉄板の二枚貼り合わせで画面右側のテヒニカフロント(裏側)の四個のネオジムマグネットに吸着固定します。ネオジムマグネットは直径12mmのサラネジ穴のあるものを使い、元々あった蛇腹止めネジ穴を利用し固定、遮光性を上げる目的でネオプレン素材を貼りました。ネオジムマグネットは強力なのでしっかり固定でき外す時に力が要る程です。