フォトグラファー宍戸眞一郎のブログサイトです。

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α7 Eマウントに旧Nikkorレンズ シフト&ティルトマウントアダプター

手持ちのSony α7RⅢに、これも以前から手元にあるAI Nikkorの数本を使うためにシフト&ティルトマウントアダプターを手に入れました。RAYQUALのNFG-SαEアダプターは以前から使っていて、品質性能とも満足していたが、レンズをティルトさせることでピント領域をコントロールするのが主な目的でFotodiox Pro TLT ROKR – Tilt / Shift Lens Mount Adapter  NIK(G)-SN Eを選びました。

このアダプターは左右に10mmずつ、トータル20mmのシフトと10度のティルトが可能で30度毎にクリックのある360度の回転を内蔵。GタイプのNikkorを使うための絞りコントロールの目立つ青色リング付きです。Fotodioxでは『要求の厳しいプロのための強化されたクラフトマンシップと高耐久性の構造』、『限定2年間のメーカー保証』と言っている。Fotodioxに直接オーダーして10日で届き、価格は$199.95(約¥21,000)送料込みで約¥25,000でした。

下のスライドショーは撮像面(Cモスセンサーやフィルム面、図ではグレイの垂直線)に対してレンズティルトを行なった場合、レンズの光軸線の動きを個人的にイメージして作ったもので、一般的にビューカメラ(4×5判など)ではレンズの光学的芯のあたり(絞り機構の位置あたり)を中心にしてティルトを行いますが、マウントアダプターにおけるティルトはレンズの光学的芯よりもずっと後方にズレたあたりを中心にしてティルトが行われます。(レンズ構成断面図はNikkor-H AUTO 50mm F2からの引用)

このようにマウントアダプターによるレンズティルトではレンズの中心からズレた部分を使う事になると思い、解像度や結像状態に疑問と不安がありましたが、かなり絞り込んで(f8以上)使う事もあり実際の使用では問題ないことがわかりました。(4×5判カメラなどではティルト角度が30度近くある場合があるが、このアダプターは10度までで許容範囲を読んだ設定かも知れない)

国内ではこの手のマウントアダプターはKIPONのTILT&SHIFT NIK-NEX が使われるケースが多いようだが、シフトは左右に15mm、ティルトは12度と言うことでプレートが左右に出っ張り少々大きいし、レンズを付けた状態では一体感が今ひとつと言う感じ。TLT ROKR – Tilt / Shift はシフト左右に10mmだがNikkorレンズの外径より若干太い感じもするが一体感とおさまりが良いと思う。(トップの写真参照)

下のスライドショーはカメラにマウントした状態での左右10mmずつのスライドで、ガタや緩みもなくスムースに動きます。ガイドの上にあるレバーは1mm単位でノッチがあり細かくコントロールでき、押し込んだ状態ではスッと動き、内面反射防止処理も行われています。

Zoom Nikkor 35~70mm 1:3.5

Zoom-NIKKOR 35~70 1:3.5

Zoom-NIKKOR 35~70 1:3.5

このZoom-NIKKOR 35~70mm 1:3.5レンズはF3時代(1981年)に手に入れたもので最近はほとんど使うことがなかったレンズですが、その作りと性能の良さは解っていたので TLT ROKR – Tilt / Shiftアダプターと一緒に現役復帰です。35~70mmは二倍ズームでしかありませんが、特別な条件を除きほとんどがこの範囲で十分であり、アウトドアでの撮影もこの範囲で撮影していることに、このレンズを使い始めて再確認でした。

Zoom-NIKKOR 35~70 1:3.5はどの焦点距離でも単焦点レンズにひけをとらないシャープでしっかりした描画が得られ、昨今のズームレンズのように全長が伸びたりする事なく内部でレンズ群が微妙に動き焦点距離を変化させています。70mm時のみマクロ機能があり35cmまで寄れるが70mm以下では最短撮影距離70cmは少々残念。

この35~70mmはフィルム時代のレンズなのでデジタル処理に関した種々のデータがないので歪曲収差、像面湾曲、非点収差、周辺減光など見るために35、50、70mmにて簡単なテストをしました。絞りはf11でチャートを撮影しましたが歪曲収差、像面湾曲はわずかで補正の必要はあまりないようで、優れたレンズ設計がなされています。イメージサークルテストで35mm時はギリギリの結果が出たように四隅に周辺減光が僅かにあります。下はその結果画像のスライドショーです。

35mmレンズのイメージサークルテスト

レンズをティルト&シフトして撮影する際に重要なのはそのイメージサークル(使用可能な円形の結像面のサイズ)の大きさで、中判(6×6)や大判(4×5)レンズはイメージサークル表記があるものが多いが、35mmレンズのイメージサークルは専用という事もあり基本的に公表されていない。一部TSレンズは表記あるものもあるが。(CanonのTS-Eシリーズは67.2mm、流石に高価だけのことはある)特にシフトはレンズの中心軸が大幅に移動するので余裕のあるイメージサークルが必要となる。SONYにはまだEマウントのTSレンズのラインナップがないが、NikonやCanonで焦点距離の違う三本のTSレンズを揃えたらとてつもなく高価な買い物になってしまう。(ただし、上記で書いたようにレンズ設計時にティルト&シフトの機構を組み込む構造なので光学的中心軸の位置などは考慮されものになっている)その点、35mm一眼レフの普通のレンズをティルト&シフトレンズに変換できるアダプターはコストパフォーマンス抜群ではないだろうか。

下の図は各レンズを最大絞りf22にして実際にシフトさせカメラ液晶モニターで目視で確認したおおよそのデータを元に作図したものです。真ん中のグレイの方形が36mm×24mmの所謂35mmフルサイズです。

 

Zoom-NIKKOR 35~70 1:3.5は約55mm時に最大のイメージサークルとなりTLT ROKR – Tilt / Shiftアダプターで最大限(左右に10mmずつ)シフト可能で(図の赤丸部分)35mm時(図の黒丸部分)はほぼギリギリでわずかなシフトでも画像のケラれが隅に発生します。その他、手持のAF NIKKOR 35mm 1:2D、AI NIKKOR 50mm 1:1.4、AF-S NIKKOR 14~24mm 1:2.8 G EDもテストし、結果がほぼつかめ何れにしても35mm用レンズは35mmフルサイズフォーマットに対して若干の余裕ある程度のイメージサークルで作られていて35mm用のレンズを使い大きくシフトする場合など、例えば建物やインテリア撮影時はAPS-Cサイズフォーマットで行うのが無理なく良い結果が出ると思います。この結果は事前にある程度予想していたので最大(左右に15mmずつ)シフト可能なKIPONのTILT&SHIFT NIK-NEXは35mm用のレンズ使用では少々オーバースペックで価格も3万円前後すること、及びカメラにレンズ共々装着したハンドリングと全体のバランスなど考慮してFotodiox Pro TLT ROKR – Tilt / Shiftアダプターの購入となった訳です。

最後に撮影した写真を紹介します。

下のスライドショー二枚の写真は長野県富士見町の入傘山、大阿原湿原で早朝に撮影、Zoom-NIKKOR 35~70 1:3.5使用で絞りはf8~f11、ピント煽り(ティルト)を効かせることで無理なく手前から奥まで自然にシャープな描写ができていると思います。(35mmフルサイズのレンズでは最小絞りで回析現象が起きピントが甘くなる場合が多いのでティルトを効かせてピント面を調整します)

下の写真は、同じく大阿原湿原で早朝に撮影、Zoom-NIKKOR 35~70 1:3.5使用で焦点距離は約60mm、絞りはf8でアダプターの左右シフトをフルに使い2カット撮影してつなぎパノラマとしたもので、カメラパンニングではなくレンズシフトなので違和感なく自然につながったと思います。

朝の湿原パノラマ写真

朝の湿原パノラマ

Sony α7Ⅱ と引き伸ばしレンズ-02 FUJINON-EX 1:5.6 90mm マクロ仕様

Sony α7ⅡとFUJINON-EX 90mmマクロ

Sony α7Ⅱをベースに引き伸ばしレンズFUJINON-EX 90mmでマクロレンズを組み上げました。以前から80〜90mmクラスのレンズでマクロ領域も可能な質の良いレンズをいろいろと検討していました。Micro-NIKKOR 105mmは昔から所持し使っていますが、105mmは場合によってちょっと長いと感じる時もあり、80〜90mmクラスの画角がよりオールラウンドと思ったからです。Sony α7シリーズ用にも純正の90mmがあり、またタムロンのSP90mmなども魅力ありますが、そこそこの値段しますし、重く大きいと感じます。僕がα7を使い始めた理由は何よりコンパクトなことが一番の理由ですから大きく重いレンズはNOです。手元にある引き伸ばしレンズFUJINON-EP 90mmを使うことを考え、オーバーホールしバルサム剥がし再接着も行いましたが長年の保管状態が良くなかった所為かクリアな状態に戻せなかったため諦め、(レンズ製造組み立ては全くの素人なので)ヤフオクで非常に良い状態のFUJINON-EX 90mmを手に入れました。

引き伸ばしレンズは本来の使用目的から考えても近接撮影に向いたレンズ設計がなされていると思います。(引き伸ばし機に装着してレンズからネガ面、印画紙面の距離を考えると通常数センチから数十センチ、大伸ばしでも印画紙面まで1メートル程度です)もちろん撮影レンズとして使う場合は無限遠でも問題ないと思いますが。それと引き伸ばしレンズの一番の魅力は軽く小さいことです。鏡胴やヘリコイドもなしのレンズ群と絞りのみで、いろいろ改造アレンジしてもやはりコンパクトで軽く仕上がります。(AFだとかブレ補正機構とか一切ありませんが・・・)

引き伸ばしレンズは一つ難点があります。それは明るさで一般的には開放絞りが5.6程度で撮影レンズとしては暗い方でしょう。紙のように薄く浅いピントと極端なボケは期待できません。僕の場合は普段からある程度絞り込んで撮影することの方が多いので問題なしですが。

FUJINON-EX90mm・Rodagon150mmとマクロ用ヘリコイド

レンズ2本と最大に伸ばしたヘリコイドのマウント側

伸びしろのあるヘリコイドを用意したので(Pixco M52-M42/36-90)以前から所有していたRodagon 150mmも同時に望遠マクロとして使えるように改造しました。(このRodagon 150mmに関してはまた時間があればレポートしたいと思います)二本の長焦点引き伸ばしレンズを撮影レンズとして使う為、ヘリコイドユニットは供用したいので手元にあったNikonのレンズマウントを使用してヘリコイドはそのままカメラマウントでレンズのみ交換可能にしました。ヘリコイドのカメラマウント側はEマウント、レンズマウント側はNikonマウントと言う仕様です。

用意したヘリコイドを一番縮めた状態で無限遠にフランジバックを調整する為使った鏡胴パーツ(延長筒)は友人から譲り受けたNikonの望遠鏡のアタッチメントパーツをカットしたりして使用しています。(Nikonの望遠鏡パーツは現在民生用として販売されていません。BORGなど専業メーカーには多くのオプションパーツがあります)望遠鏡パーツはM52とかM42のネジが切ってある場合が多く改造使用時に便利なところです。取り付け部分(マウント部分)をうまく作れればただのアルミパイプなどでも製作可能ですが。

Fujiの資料よりスペックを転記します。
EBCフジノンEX 90mm 1:5.6/本製品は、生産終了いたしました。
焦点距離(mm):90/口径比(F):5.6/レンズ構成(群-枚):6-6
包括角度(開放):58/最大適用画面寸法(開放・mm):56×84
最小絞り(F):32/設計基準率倍率:×7/使用倍率範囲:×1.5~×15
色消波長域(nm):380~700/歪曲(%):-0.06/焦点距離設計値(mm):91.9
鏡胴外径(mm):54/フランジ取付ネジ:39 P=1/26″/鏡胴長(mm):40
フランジフォーカス(mm):82.1/バックフォーカス(mm):74.8
第2主点とフランジ面の距離(mm):9.9/主点間隔(mm):-2.3
全長(mm):40/重量(g):95

ここで注目なのはまず単体重量95グラム!!です。非常に軽量、EXシリーズはEPにつづきFujiの最後の引き伸ばしレンズでEPまでは主に金属製でしたがEXでは樹脂パーツを使用し軽量化されています。そして名称は「EBCフジノン」となっています。昔Fujiの大判レンズを良く使用していましたがEBCフジノンがありました。富士フィルムの資料によれば『FUJIFILMのレンズは”EBC”の文字がクレジットされているものがある。これは”Electron Beam Coating”の略で、多層反射防止コートがレンズに施されていることを表している。レンズと空気の屈折率(INDEX)の差から生まれる光の反射を防ぎ、描写性能を高めるためのテクノロジーである。』とあります。このブログにも書いていますがFjinon EP 50mm F3.5も撮影レンズとして使っています。確かにこのEX90mmの方が色転びがなくニュートラルで抜けの良い感じがします。

もう一つ僕が注目したのは『最大適用画面寸法(開放・mm):56×84』の部分です。引き伸ばしレンズで90mmクラスは対するネガサイズが6×7もしくは6×8ですから、レンズで言うところのイメージサークルが絞り開放で80mmあると言うところです。これは自作ビューカメラでアオリやシフトがこの小さなレンズで十分使えるスペックと言うところです。

FUJINON-EX90mmを撮影レンズとする為に

上の写真はEX-90mm(フィルターネジ径46mm)を撮影レンズとして使うためのヘリコイドを除いた構成パーツでNikon BR-2リングはフィルター径52mmのレンズをリバース接続(レンズをひっくり返して使う)で使うためのリングで写真では見えない下側に52mmのネジが切ってあります。BR-2リングの上方にある52mmメスネジ付きのフランジバック調整リングの一方に42mmアダプターをかませたEX-90mmを取り付けます。また野外での撮影時のために46-52アダプターと52mmレンズプロテクトフィルター、52mm径のアルミフードを用意しました。長焦点や望遠系のレンズはクリアな画像を得るため余分な光をカットするフードは必需品です。携帯時にはフードをレンズ本体に被せてコンパクトにするため内側に黒のフエルト布を貼っています。

FUJINON-EX90mm 周辺減光と湾曲撮影テスト

絞り開放でのレンズテスト撮影。Fujiの発表スペック通り、周辺減光、湾曲ともほとんど0です。(もっとも90mmクラスは焦点距離も長いので35mmフルサイズでは周辺減光は少ない筈ですが)

スタジオにてデンファレ撮影 ISO500 f22 1/50sec.

上の写真、Nikonのスピードライト(レンズ先端装着用のMACRO SPEEDLIGHT SB-21、かなり以前のものです)とLEDを使い撮影しました。深いピントが欲しいためf22ですが小絞りボケ(解析現象)や色収差、パープルやグリーンのフリンジは見られず、極めてクリーンな描画をします。また十分にシャープですが柔らかい階調を持った自然な写りも良いと感じました。

リンフォフボードに装着

スタジオでの撮影ではリンフォフボードにマウントして自作のビューカメラ(当ブログでも紹介している)にて撮影することが多いです。十分な大きさのイメージサークルがあるのでビューカメラ用にも最適と思います。レンズ自体非常にコンパクトで軽量なのも魅力です。

夕暮れ時の自転車2台 ISO100 f8 1.3sec

夕暮れ時間、窓越しに2台の自転車を撮りました。ほの暗い時間帯のやわらかな光の感じが自然に捉えられた気がします。またこのレンズで撮影し、気に入ったものがあれば追々写真を追加していきます。

最後に、

Sony α7シリーズが登場してから引き伸ばしレンズを撮影レンズとして使う方も増えたと思います。引き伸ばしレンズ自体現行品はわずかで、ほとんどがかなり以前に製造されたもので、中古品として安く出回っていますから(大半が数千円台)入手しやすいです。古いものでも状態さえ良ければレンズの基本性能は決して悪いものではありません。撮影レンズに転用する場合重要なのはヘリイドの選定と鏡胴の作りがとても重要です。ヘリイドと鏡胴を含めたレンズ本体の内面反射を徹底的に抑え込む処理がレンズフードと同様に必要になります。市販の撮影用レンズではこの辺は徹底して行われています。今回使うことにしたヘリイド(Pixco M52-M42/36-90)は最大に伸ばすと90mmあります。内径の小さなものは内部反射も強くなりやすいので太めのM52を使いました。伸び代が大きいと言うことは内部の摺動部分も大きくここは黒のアルマイト処理されていますが、まだ反射はあります。摺動部分以外は黒のウールペーパーを貼り、細かなところはリキテックスのJET BLACKで塗りつぶしました。仕上がったレンズユニットを光にかざしてレンズマウント面から覗き込み鏡胴内部が真っ暗なのが理想的です。

デジタルカメラの撮像素子CMOSはフィルムに比べて極めて平らな表面で鏡のように強い光があたれば反射もします。レンズから入ってきた光を撮像素子面のみに届くように、他の余分な光はカットしてしまうのが理想ですが、なかなか難しいところです。古い引き伸ばしレンズであっても曇りやホコリがなくクリアな状態であればフードを使い鏡胴内部の反射対策など行うことでコントラストのあるしっかりした画像を得ることができると思います。

α7ⅡとHELIAR 40mm F2.8

SONY α7Ⅱ & HELIAR 40mm F2.8  撮影 自作ビューカメラ+NikonD800E+Grandagon-N90mm f22

SONY α7ⅡでCOSINAのHELIAR 40mm F2.8を使っています。この一風変わったレンズをレポートします。
このレンズを手に入れたきっかけは当ブログでも紹介していますが、HELIAR 15mmを使うために購入したVM-E Close Focus Adapterが手元にあったので、ヘリコイドもなくレンズ構成に絞りだけ付け沈胴式を採用し(非常にコンパクトに収まります)単体では価格もこなれているので購入しました。上の写真は撮影状態に沈胴式を引き出した状態ですが、45度くらい回転させロックを外して押し込み収納するとレンズ先端はカメラグリップより若干でっぱる程度でパンケーキレンズ同様です。

撮影 自作ビューカメラ+α7Ⅱ+Planar2.8/80 f11

上の写真はレンズ単体を沈胴させた状態の前面と裏面です。価格から想像できないくらいの金属製の素晴らしい造りこみでシャンペンゴールドのニッケルメッキは独特の雰囲気でさすがにCOSINAと感心します。プレートの左右に立ち上がるピンはアダプターに脱着するときの取っ手になります。
以前からある沈胴式のレンズではライカのエルマー50mmなどありますが、このHELIARは40mmと言うちょっと中途半端な焦点距離のように思いますが、使ってみて解ることですが何気なく自然にみている視野に近い感じで、50mmだと少し狙い込んだ画角になり、35mmだと意識的に少し広角で40mmはごく素直な感じがします。(この辺は個人差があるとも思いますが)外観はかなり趣味的な感じのするレンズですが、描画は極めてまっとうでCOSINA独特の色ノリの良いしっかりした現代的な描画でシャープな写りをしますが決して硬くならないところが魅力です。

駒沢公園駅 f5.6 ISO200 1/10 手持ち撮影

上の写真は地下鉄駅の工事中の壁ですが、湾曲収差などほとんどなく骨太のしっかりした描画であることがお分かり頂けると思います。(画像処理で少しコントラストなど上げていますが)この写真はf5.6あたりで撮っていますが、僕は理由がない限り絞り開放でボケを使うことはしません。このレンズもf8を中心にして使っています。唯一気になる部分はギリギリ四隅の描画が少し甘いことです。(このレンズ、沈胴式を採用したコンパクトサイズでは無理な要求かもしれませんが)フィルムカメラで使った場合はほとんど気になることはないと思いますが。

上の写真は湾曲収差と周辺光量のテストシュートです。絞りf8でJPEG撮影、レンズ補正なしの素のままですが湾曲もほとんどなく(若干糸巻き傾向ですが)周辺光量落ちもほんのわずかで、日常十分に使える性能を持っています。

SONY α7でマニュアル撮影に慣れていて、いつもバッグなどに入れて持ち歩きたい人には40mmと言う焦点距離、沈胴式のコンパクトさなど最適なレンズと思います。ソニー純正レンズではないのでレンズ情報が記録されないのでソニーカメラapp「レンズ補正」を併用して使っています。

 

α7Ⅱ と SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Aspherical Ⅲ


他の35mm一眼レフに比べSony α7シリーズはフルサイズでありながらミラーレス構造で非常にコンパクトで軽く持ち運びも楽です。(手の大きい人にはちょっと小さすぎるくらいです)
大きく重くなった一眼レフに嫌気がさしてα7Ⅱを使い始めた訳ですが、肝心のレンズが大きく重いのでは困ります。特に最近のレンズはズームで明るい大口径、AFで手ぶれ補正機能内蔵、構成レンズ枚数も諸性能を高める為どんどん増える傾向にあり重量も増え大きくなっています。
広角レンズをよく使うのでSUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Aspherical Ⅲを選びました。重量は247gで手の中に入る大きさです。(小さいのでずっしりした感じではありますが)コシナから最近Eマウント用の10mm、12mm、15mmが出ていますが、クロスフォーカスアダプターを介して使うVMマウント用。クロスフォーカスアダプターがあれば他のVMマウントレンズやZEISS ZMレンズなど魅力のあるレンズがコシナにあるためです。
下の写真はHELIAR 15mmとVM-E Close Focus Adapterでこのアダプターもレンズ同様金属製で非常に作りが良く、ヘリコイドも内蔵しカメラ側レンズ側ともカッチリ装着できガタなど皆無です。ヘリコイドは4mmの繰出量があり、装着したレンズの最短撮影距離がさらに伸び、クローズアップレンズやエクステンションチューブが必要ないくらいです。

SUPER WIDE HELIAR 15mm & VM-E Close Focus Adapter

本来このVMマウントレンズはライカのMマウントと互換性があり(フォクトレンダーブランドがVM、ツアイスブランドがZMと表記しているようです)ミラーボックスを持たないレンジファインダーカメラ用なのでフランジバックを無理やり伸ばす必要がなく設計や構造に無理がなく比較的にコンパクトで軽いのが良いです。
ただしフランジバックが短いとデジタルカメラの撮像素子に対しては問題があり、特に広角系では後ろ玉(レンズ後端)がボディの中にもぐりこむように撮像面に接近します。それにより周辺光量落ちと周辺色かぶりが顕著になり、最近Eマウント用の10mm、12mm、15mmはその辺対策済みと思いますがこのSUPER WIDE-HELIAR 15mmもⅡ型からⅢ型への変更で対策されています。(裏面照射型Cモスの撮像素子を持つα7RⅡはこの問題もかなりクリアされている様です)

前置きはこのくらいで撮影した写真をご覧ください。

土曜日の表参道、ビル内にて

新国立美術館の午後

地下鉄表参道駅

上の三点の写真の様にカメラを水平に構えると確かにワイドレンズであはりますが、超ワイドレンズの嫌味がなく自然に見えるのがこの15mmの良いところです。
名前のSUPER WIDEとはうまい使い方と思います。10mm F5.6はHYPER WIDE、12mm F5.6はULTRA WIDE!!
目の前に広がる広い景色を単純に撮り込みたい時や、引きのない状況で画角を稼ぎたい時がこのレンズの出番です。やや油絵的な豊かな色ノリもこのHELIARシリーズの特徴のようです。コシナの説明では開放値がF4.5でありフォーカスを2〜3メートルに合わせればほとんどパンフォーカス(手前数メートルから無限遠までOK)で行けるように書いてあるが、使い込むと確実にピント面がありしっかり狙って撮る時はシビヤなピント合わせが必要です。その点もα7Ⅱはボタンひとつで簡単にフォーカス拡大ができるので便利。

汐留ビル群の夕方

汐留のビル群の撮影はカメラを空に向けて煽っています。このように水平でなく少し煽るだけで15mmの超広角独特のパースペクティブが表現できるレンズでもあります。
またこの写真から分かるように画面の四隅に空とか微妙なグラデーションの中間色があると、まだ若干色かぶりがあります。(これはRAWで撮影して現像段階でレンズ補正を行い、さらに四隅の色かぶりも補正していますが)現像処理した画像をPhotoshopなどで色々処理をかけると四隅の色かぶりがまた少し現れてくるところを見ると、元データ四隅の周辺落ちと色かぶりがα7Ⅱではまだ完璧ではないようです。
ただ周辺落ちや多少の色かぶりは気にしない場合やあったほうが雰囲気が良い場合もあり、この辺は好みの問題でしょうか。

三国山のブナ

上の写真は山中湖の横、三国山ブナの大木でこの辺りから丹沢山系や箱根周辺は関東圏でブナ林が見られます。(人間の手が入っていない山にはまだブナが生息しているということかもしれません)この写真ではHELIAR 15mmの画面周辺の描写性能を示します。このレンズは歪みやゆがみがほとんどなく直線はまっすぐに写り建物などの撮影もこなせます。この写真もカメラは水平に構えています。このブナの木はかなりの斜面にあり斜面傾斜がわかると思います。下の写真は画面上側の右側端の部分100%切り出しです。絞りはf8で撮影、広角のため画像が斜めに引っ張られていますがかなりしっかりと解像していてピントもなくボヤボヤした感じはありません。この程度であれば十分許せる範囲と私は思います。

100%部分切り出し

下の写真は、同じく三国山のブナの大木「天狗ブナ」です。10月の初め紅葉が始まったばかりの頃撮影しました。森の中であまり引きのない場所でもこのレンズは見えている全容を捉えることが可能です。超広角の独特の癖もあまり感じさせない(湾曲歪みが殆どないので)この15mmは良く使うレンズの一本です。

三国山ブナの大木、通称「天狗ブナ」

Sony α7Ⅱと引き伸ばしレンズ・FUJINON-EP


Sony α7シリーズが発売されてから引き伸ばしレンズを撮影レンズとして使う話題が出てくるようになりました。そのせいでもう使われる事なくしまい込まれた古い引き伸ばしレンズがネットオークションなどに出て来て少しずつ値上がりしたりしています。
Sony α7シリーズは35mmフルサイズでミラーレス構造の為フランジバックが18mmしかないので純正レンズ以外でも使用可能な(アダプターなど使い)レンズが多くあります。Sonyもその事はよく分かっているようで他社製のレンズや古いレンズもうまく使い回しできるよう配慮されています。
そんな訳で話題に触発され、もう使わなくなった暗室の棚に眠る数本の引き伸ばしレンズから35mmで一般的に標準レンズと言われる50mm、FUJINON-EP 1:3.5/50を常用レンズの一本に加えることにしました。
まず、手始めはFUJINON-EP 1:3.5/50のオーバーホールです。ずいぶん長い間使わなかったのでカビや埃、レンズ面の曇りなど取り除き、幸いにもこのレンズは貼り合わせのバルサム切れがなかったのでバルサム剥がしは必要なく再組み立てしました。次はこのレンズのフランジバック焦点距離51.6mmを確認、ヘリコイドユニットの厚みや繰り出し量などのめどをつけました。


用意したパーツの紹介。ヘリコイドユニットM42はmukカメラサービスの商品で厚みは15.4mm〜27.5mm(繰り出し量12mm)手前と後ろに42mmのメスオスのネジが切ってあるもので定価4,800円、同様のもがamazonでは¥3,400位であるようです。ちなみにM42と言うのはレンズマウントのネジ規格でプラクチカが採用し、昔のペンタックスのスクリューマウントも同じ径42mmピッチ1mmのネジです。

引き伸ばしレンズのマウントネジはライカマウントが多く、これは39mmネジなので一回り大きな42mmに付ける為のアダプターネジが必要でamazonから入手。(一個¥399でした)そしてヘリコイドユニットをSony α7に取り付けるM42 Eマウトアダプターが必要なのでこれもamazonから¥540で超薄型というものを入手。M42マイクロチューブセットは7mm、14mm、28mmの三種類がセットでクローズアップ(接写)する時に使用していますが、70〜90mmのレンズも組み合わせることで使えます。(90mmクラスのレンズをマクロレンズとして使う場合はより延び代の大きいヘリコイドを選んだ方が良いと思いますが)FUJINON-EP 1:3.5/50はマウント側に奥行き7mmの調節リングがあり、これで光路の長さを変更できるようになっています。今回これは付けたままでちょうど良くピントは無限遠からレンズ先端30センチまでカバー出来ています。ちなみにEL-Nikkor 1:2.8/50はチューブセットの7mmを追加して無限遠からレンズ先端約50センチまで可能でした。引き伸ばしレンズは各社それぞれフランジバック焦点距離の違いがあるので確認が必要です。下の写真はカメラマウントできる状態に組んでヘリコイドを最大に伸ばしたところですが、フォーカスリングがカメラボディ側ギリギリにくるので慣れないと使いにくいですがコンパクトに収まり軽いのところが良いです。

FJINON-EP50mm 4Photos


最近のコンピューター設計や非球面レンズを使用した複雑な構成をとらない二昔ほど前の4群6枚オルソメター型レンズですが、開放(f3.5と決して明るいレンズと言えないが)から中心部は極めてシャープ、f8位まで絞れば周辺部まで十分な解像度を持ち歪みや湾曲もほとんどなく、改めて引き伸ばしレンズの高性能を実感しました。古いとは言えカラープリントの時代のもの、コーテイング処理も行われアクロマチックレンジ(色収差)は380〜700nmで十分。これが暗室での引き伸ばし作業にチューニングしてある所為か撮影に使うとなんとも柔らかくロマンチックな色再現でとても気に入りました。レンズ鏡胴はしっかりした金属製で絞り羽根は10枚構成の円形絞り、またシンプルなレンズ構成ゆえフォーカスアウトした部分のボケに癖がなく極めて自然、これも最近のレンズではなかなか得られないところでしょうか。

FUJINON-EP 50mm スペック

50mmの引き伸ばしレンズは主に35mmネガから8’×10’や四つ切りの印画紙に像を焼き付ける用途なので製版レンズなどと同等の性能が必要なのは理解しつつも撮影レンズとして使うことは最近まで考えが及びませんでした。マクロプラナー50mm F2も所持していますが、チョット味が違うのでこのFUJINONを仕事にも使っています。

FUJINON EP 50mm f8

Zeiss Makro-Planar 2/50 f8

上の写真はFUJINON-EP 1:3.5/50とマクロプラナー50mm F2で両方とも絞りf8で湾曲収差と周辺光量落ちテスト撮影、レンズ補正なしの素のままのJPEGですがFUJINONの素性の良さがよく判ります。(マクロプラナー50mmはZF Nikon用なのでマウントアダプターを介してレンズ群が撮像素子と距離があるので条件的には有利かもしれませんが)

蓼科大滝付近の流れ蓼科大滝脇の原生林白駒池付近庭に咲いたホトトギス

α7シリーズをお持ちでマニュアル撮影に慣れている方は引き伸ばし用のレンズを試してみる価値あります。EL-Nikkorは人気で値上がり傾向がありますが他にもFUJIやLUCKYでジャンク品で安く出回っている物も色々とあります。(自身でオーバーホールする自信のない方はカビやバルサム切れのない物を選んでください)撮影レンズとして使うために一つ注意があります。元来暗室で画像投影のためのレンズなので逆光及びハレーションには弱いので画角ギリギリまでのフードを用意して本来の性能を引き出してください。(私はコーヒーの空き缶を適当な長さに切り黒のマットテープを巻いて使っています。)また、他の写真や大きめの写真は自身のサイトにもアップしています。興味のある方はご覧ください。

最近このレンズで撮影した紫紺野牡丹のつぼみの写真、掲載します。M42マイクロチューブセットを使いかなりのクローズアップですが、なかなか切れの良い描写をしています。カメラはa7R3で深いピント領域が欲しいのでピント面をずらしながら5カット撮影してPhotoshopで合成したものです。

紫紺野牡丹の写真

紫紺野牡丹 2018.11